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イギリス法人 その3 覇権をめぐる終わりなき暗闘

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オフショア金融の始まりは、1945年に発足したブレトンウッズ体制を機に、イギリスが表向きの覇権をアメリカに譲ってからである。第2次世界大戦後、アメリカの主導のもと、国際通貨を安定させる試みが開始されましたが、これは規制を嫌う金融資本が逃避を図ります。

 

この機に乗じ、覇権を取り戻そうとしたのがイギリスでした。軍事力で世界をコントロールする体力はもはやイギリスにはありません、そこで、彼らが目をつけたのが、世界経済のコントロールでした。そのためには、どうしても世界中の資産を集める必要があったのです。すでに金融センターとしての地位を確立していたロンドンのシティに資金を集めるべく、規制を緩和し、アメリカから逃亡を図る金融資本を受け入れました。

 

それだけではありません、官民で連携して影響力の及ぶ元植民地にも同じ法体系を移植しました。欧州に散らばる王室属領は欧州とアフリカから、カリブ海海外領土はアメリカから、香港、シンガポールはアジアから、資産を集める尖兵の役割を果たしました。例えば、有名なケイマン法人やBVI法人などはアメリカから、合法違法を問わず、より多くの資金を集めることが当初の、そして最大のミッションでした。

 

一方のアメリカもこのまま資産の海外流出を黙って見過ごすわけには行きません。一部州法の規制緩和、オフショア国への直接の政治圧力、国際社会を巻き込んだ規制強化を矢継ぎ早に実行に移してきました。

 

ビジネスルールに違反する脱税や粉飾決算、マネー・ロンダリングなど経済犯罪を野放しにしていれば国際経済全体が沈むため、取り締まりが必要なのは明らかですが、アメリカがその大義名分をかかげ、人一倍それに取り組み、成果を世界中にアピールするのは、自国の資本流出、租税流出という喉元に突きつけられた刃を振り払うのに必死だからです。

 

アメリカの行いは一定の効果を奏し、いくつかのオフショア域はその機能を形骸化されてしまいました。しかし、イギリスがこのまま引き下がるわけはありません。

今度は総本山であるイギリス自身が、法人税率を下げ、特に非居住者法人に対する規制を緩和してきました。法人税率は2016年2月現在20%、2020年の18%まで徐々に下げられる予定となっています。本丸が本気でこの暗闘に乗り出すほど、覇権争いが熾烈になってきたと言えます。

 

ここに来て登場してきたのが、中国です。

生産余剰能力と不良債権が問題視されている中国ですが、間違いなくお金持ちであって、これからも世界経済への影響力を強めていきます。

しかし、そのやり方は英米のように、他人のお金を自分のところに集めて世界をコントロールするわけではありません。お金持ちであることを自慢できるのがある種のステータスと捉えているため、自分のお金をどこまで増やして世界に影響を与えられるか、というのが中国の出発点となります。

イギリスがアフリカの現地支配層を通して国を搾取させる代わりに、タックスヘイブンの活用法を彼らに教え、一定の利益を共有したのに対し、

中国はアフリカ開発で潤う中国人が資本をアフリカから持ち出すために、自分たちが使いやすいアフリカのオフショア域を懐柔しました。

 

また、中国はイギリスとの距離をつめる機会を長年うかがって来ました。

昨年、中国系の富豪がイギリスのインフラ企業を買収したり、中国の総書記が人民元の国際化のため、ロンドンを訪れたことは記憶にあたらしいと思います。

 

 いかがでしたでしょうか。オフショア金融センターの歴史は、覇権争いする大国の資本獲得競争とは切っても切れない関係にあることをお分かりいただけたかと思います。

そして、大国の次の動きが、オフショア域、ひいては私たちの利益に直接的に大きな影響を与えることもお分かりいただけたかと思います。

 

ここで記事を書いて薀蓄をたれている私も、タックスヘイブンを利用してちょっと儲かったと喜んでいるそこのあなたも、金融の覇権争いに翻弄されているひとりの小さな人間に過ぎないのです。

そして、翻弄されながらも、世の中がどのように大きく動いていくのかを予測しながら、波に呑まれないよう、泳ぎ続けるしかないのです。

 

イギリス法人のことを詳しく書こうと思ったのですが、気がつけばタックスヘイブンの歴史をつらつらと書いてしまいました。

なので、イギリス法人のことは次回書きます。

 

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