香港法人との対比でこれまでシンガポール法人を書いてきましたが、今回はシンガポール法人単体で扱いたいと思います。
シンガポールの法人税率は最高17%で、多くの企業では軽減税率の適用やタックス・プランニングの努力により、10%前後に収まっております。
東南アジア諸国へのアクセスが非常によく、金融関連の法体系・運用も成熟しているため、東南アジア投資にあたってシンガポール法人の設立はいつも有望な選択肢となってきました。
しかしこれは5年前の話であって、多くの方にとってシンガポール法人が必ずしも最善の一手でない場合が増えてきました。
その理由はずばり、シンガポール法人はシンガポール居住者のためのものであって、もはやオフショア居住者のものではないからです。
非居住者法人の場合、各種税金の減免対象にならないだけでなく、他のシンガポール法人との取引についてシンガポール政府は強く介入してきます。東南アジア投資にあたって、他のシンガポール法人と取引することが多々ありますので、政府と納税額の調整をする事態は避けられません。
オフショア法人では一般的な、オフショア取引なら政府は関与せず、というスタンスとは逆に、シンガポール政府は強く関与してきます。最初から自由ではなく、洗練されたルールの中での自由という考え方です。
もちろんこの考え方はシンガポール法人の非居住者法人だけでなく、居住者法人にも適用されます。
しかしながら、居住者法人と非居住者法人のランニングコストの違い、優遇措置の違い、非居住者法人の自由度の少なさを考えれば、やはりシンガポール法人は、シンガポール居住者が、貿易、金融などルールが確立された業界で、シンガポール外に向けてビジネスされるときに活きる器だと言えます。