海外法人の設立を検討されるほぼ全ての方が、匿名性の高さと自由なビジネス環境を期待しているかと思います。
資産形成期にそれを意識しすぎると手間暇費用がかかり投資効率が落ちると以前書きましたが、もう一つ、利用される方は実感が湧きにくいが重要なことがあります。
それは、マネーロンダリングに巻き込まれるリスクです。
2000年代初頭から、欧米先進国にてマネーロンダリング対策が強化され、日本でも一歩ずつルール整備がなされております。欧米先進国の金融インフラは、伝統的なオフショア法域と深い関係がありますので、マネーロンダリング対策強化の方針は、当然にそういった法域でもすぐさま採用されました。いまだ世間でタックスヘイブンの代名詞となっているケイマン諸島や英領バージン諸島(BVI)が、いち早く便利かつ透明なオフショア金融センターへと変貌を遂げられたのも、そういった背景からです。
しかしそれで苦しくなるのが犯罪資金を扱う人たちです。法律で保証された匿名性と自由度は犯罪資金には適用されないからです。その結果、多くの犯罪資金が、
①最貧国と紛争国、そして後発のオフショアへと流れ込み、そして
②国際的なオンライン取引の増加に伴い、日常生活に紛れ込むようになりました。
金融機関による口座開設の難化と取引調査の増加は、このプロセスを断ち切るためだけにあるといっても過言ではありません。
それにより割を食ったのが、後発組の海外法人利用者です。もともと匿名性と自由度を求めて海外法人を設立したのに、度重なる値上げにもかかわらず口座開設はまずます面倒で難しくなり、なんとか開設できたと思ったら送金のたびに説明を求められるのが、「あたりまえ」の状況となりました。
それでは本末転倒ということで、後発組は、匿名性が高く、規制がなく、値段も安いサービスを求めて時代に抗うわけですが、同じものを犯罪資金を扱う人たちも強く求めているということを忘れてはなりません。
特にやましい動機からそうしたサービスを利用した結果、個人情報や口座が流出してマネーロンダリングの隠れ蓑にされてしまったとしても、訴えることもできず、逃げることもできません。
1.法のもとに保証された匿名性と自由度
2.無秩序ゆえの匿名性と自由度
どちらが自分に適しているのか、どちらが割に合うのか、よく考える必要があります。