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2025年4月から、イギリスでは長年続いたnon-dom制度が正式に廃止されました。
この制度改正は、イギリスに居住する富裕層や国際的な資産家にとって、過去100年で最大級の税制転換になります。
non-domとは、non-domiciledの略で、法律上の本籍地(ドミサイル)がイギリス外にある個人を指します。
彼らは、イギリスに住んでいても送金課税(remittance basis)を選べば、海外で得た所得やキャピタルゲイン(売却益)に対しては、イギリスに送金しない限り課税されないという特例を利用できました。
つまり、海外の投資収益や信託所得などをイギリス外で保有していれば、イギリスでの課税を永久的に先延ばし、つまり実質的に回避できたわけです。
この仕組みは、イギリスが国際的な富裕層を呼び込むための優遇税制であり、ロンドンの高級不動産業界やプライベートバンク業界を支える制度でもありました。
代わって導入されるのが海外所得(FIG:Foreign Income and Gains)制度です。
この制度では、これまでのような送金課税は廃止され、海外所得・海外キャピタルゲインはイギリスに送金されなくても、原則として課税対象となります。
要点は以下の通り。
- 過去10年間、イギリスに税務上の居住実績がない人が対象
- 居住開始から4年間、海外所得・海外利益は非課税
- 4年を過ぎると、全世界所得がイギリス課税の対象に
- 期間中にイギリスへ送金しても課税されない(送金の概念が消滅)
つまり、新しくイギリスに移住する人にとっては、短期的な優遇がある一方で、既に居住している富裕層にとっては、猶予期間が過ぎ次第、事実上の課税強化になります。
今回のnon-dom廃止は、単なる税制改正ではなく、イギリスを居住地とすることの意味を再定義する大改革ですので、その範囲は信託と相続にも及びます。
税負担増を嫌うヨーロッパと中国の富裕層の中には、スイスやイタリアなど優遇税制が残る国へ移住する動きがすでに見られます。
これからイギリス移住を検討する方は、事前に送金・信託・相続の複合的な視点から、長期的な資産アロケーション設計をする必要があります。
※この税制改正は、イギリス外に在住しつつ、イギリス法人を活用してグローバルで実業・投資を手掛ける方への影響はございません。
詳しくはメールよりお問い合わせください。
kaigaihoujin.yamaguchi@gmail.com
