前回のつづき⇒
海外FX会社がどんな性質のビジネスで、登記に際しての選定基準と一般的な法域についてこれまで紹介してきましたので、今回は、比較的低コストでライセンス取得が容易なケースを想定して、法人登記からライセンス取得、そして事業運営まで、一気通貫して手順をご紹介します。
1. 会社形態の選定(所要時間:1週間)
海外FX事業は、主なオフショア法域の国際事業会社(International Business Company、IBC)を器(ビークル)とするのが一般的です。
IBCは登記がスピーディーに行われ、コストが比較的安く、外国人非居住者による100%所有が可能で秘匿性が高く、ノミニーも認められており、さらに税制優遇措置も取られていますので、海外顧客向けFX事業に最適です。
2. 必要書類の準備(所要時間:2~3週間)
主な書類は以下の3点
- 取締役・株主の身分証明書(パスポートコピー)
- 取締役・株主の住所確認書類(公共料金請求書など)
- 法人定款(Articles of Association、通常は海外法人の秘書役・管理会社が用意)
3. 法人登記手続き(所要時間:2~3週間)
登記局に上記の必要書類を提出すると、法人登記証明書(Certificate of Incorporation)が交付され、法的に会社として活動可能になります。
他の法人書類は発行にさらに数週間時間を要するのが一般的です。
4. 銀行口座の開設(所要時間:4~8週間)
法人登記完了後、資本金の入金や運営資金管理用として現地で銀行口座を開設します。登記法域と口座法域が同じのため、登記書類の提出や審査が比較的スムーズです。また、エージェントを介した現地銀行との関係構築も容易で、資本金入金や初期運営費の管理が簡単に行えます。
※一方で、国際的に決済システム(Visa/MasterCard、Skrill、Neteller、暗号資産など)と連携や、外貨取引や大口送金に柔軟で、海外顧客の決済ニーズへの対応、顧客資金を管理するメイン口座としての信頼性を考慮して、FX取引用の顧客資金口座は、ライセンス取得後にその法域外(欧州・香港・シンガポールなど)で開設・運用するのが安全です。
5. FXライセンスの申請準備(所要時間:4週間)
金融庁はじめ現地の監督機関に提出する主な書類は以下の通りです。
- 登記完了済み法人の証明書
- 取締役・株主情報
- 事業計画書※
- 最低資本金の準備
※海外FX会社のライセンス申請における事業計画(Business Plan)は、単なる形式書類ではなく、監督機関がリスク管理能力や事業の信頼性を評価する重要書類です。市場分析、リスク管理、コンプライアンス方針、技術・システム、財務計画、立上げスケジュール、組織体制などを含み、A4サイズで15枚から30枚程度詳しく記述する必要があります。
6. FXライセンスの申請と交付(所要時間:8~12週間)
書類提出後、審査・信用調査・AML対応チェックが行われます。
承認されると、正式にFXライセンスが交付されます。その間、追加書類や質疑応答が数回行われるのが一般的で、エージェントと密にコミュニケーションを取りながら素早く対応するのが鍵です。
7. 決済システム導入と資産隔離管理
FXライセンスが取得できて、ようやくFXサービスを展開できます。
FX取引用の顧客資金口座の開設と、Stripe、Skrill、Netellerなどの決済システムの導入を同時並行で進めます。上述の通り、この際の銀行口座は、欧州・香港・シンガポールといった金融センターで行うのが一般的です。自力で行うこともできますが、FXライセンス取得をサポートした登記代理店のネットワークを活用するのがスムーズです。
口座が開設され、顧客資金が流入すると、資産隔離口座(Segregated Account)で管理して、自社の運営資金と分離します。これにより、顧客の信頼性向上とコンプライアンス遵守が実現されます。
8. 事業運営・継続コンプライアンス
安定した事業運営には、ライセンスと口座の維持が不可欠であり、そのためには、年次報告書の提出、会計監査の対応、銀行・決済サービスの定期審査の対応といった継続コンプライアンスの努力が重要になります。
海外FX会社が登記法域内で事業を営まず、海外収益のみを得る場合、法人の形態がIBCですので、原則非課税となりますが、政府へライセンス維持費・年次手数料は必要です。
また、顧客(投資家)に安心して利用してもらうために、顧客(投資家)の主な居住国や主な資金送金先法域の税法と金融法については、予めリサーチして、リスクやトラブルに備えておくのが吉です。
以上が、海外FX会社の「一般的な」設立手順になります。
海外法人サポートセンターでは、海外FX会社を含め、ライセンス取得が必要なオフショア法人について、パッケージ販売しておらず、クライアント様の要望に応じて、オーダーメイドで組成するアプローチを取っております。
クライアント様によって作りたい「ビジネス」が異なりますし、法域によって規制もコストも市場アクセスも異なりますので、オーダーメイドでしかサポートできないはずなのですが、実務では使えないパッケージを安易に販売する業者と、パッケージがあればビジネスを始められると安易に考える利用者が絶えないのは残念なことです。
詳しくはメールよりお問い合わせください。
kaigaihoujin.yamaguchi@gmail.com
次回は取引システムについて書きます。
