租税条約とは、簡単にいえば二重課税と脱税(非課税)をなくすための国同士の決まり事です。
たとえば、日本企業がアメリカで収益を上げ、アメリカで課税された後に日本でも課税されてしまったら二重に課税されたことになってしまいます。逆にアメリカ企業が日本で収益を上げたのに、日本で課税されず、アメリカでも課税されなければ結果として脱税していることになります。
このような不均衡、不公平をなくすために、二国間租税条約では、
どのような収益を課税対象とするのか、
収益をあげた場所をどのように認定するのか、
税率はどれくらいに統一すべきか、
どんな情報をお互い開示するのか、
異議申し立て手続きはどうするのか、
といった項目について取り決めをします。
そして、これをきちんと実行に移すために、両国は国内法を制定します。
租税条約と国内法に差異があった場合は、租税条約が優先されます。
一方タックス・ヘイブンと呼ばれる国は、非居住者が法人を設立しても収益に対して原則課税されない税制を持っているいます。いわゆるオフショア法人の特恵税制です。機密性が高く、税金もかからないことをいいことに、日本に居住する日本人が、日本で上げた収益をあたかもオフショアで上げた収益のように見せかけて脱税するケースが後を絶ちませんでした。
そのため、日本政府は、こうしたタックス・ヘイブンと租税条約を締結することで、タックス・ヘイブンから情報提供を受け、日本人の脱税の取り締まりを強化しました。この情報提供で炙りだされた日本人は、日本国内のタックスヘイブン対策税制という法律に違反して脱税していることになり、そのあとがっつり追加徴収が待ち受けていることになります。
日本政府が人気のあるタックス・ヘイブンと租税条約を締結すると、慌てて法人を閉鎖し、租税条約を締結していないタックス・ヘイブンへと資産を移動させる人がいるのはそのためです。脱税するのはよくありませんが、脱税がバレるのは誰だって御免こうむりたいですから。