2024年半ば、一年ほど前にブルームバーグでこんな記事が出ていました。
シンガポールがマネーロンダリング事件以降、海外資金の精査を強化している一方で、香港は優遇政策により富裕層を取り戻しつつあるというもの。
2025年も2/3が過ぎ、このトレンドは定量的な指標でも観察できるようになりました。
まず注目すべきは、香港株式市場への本土資金の流入です。いわゆる「ストックコネクト」を通じた投資額は、2025年に入って1,000億米ドル強と過去最高水準に達しました。割安感の強い香港市場に加え、政策的な支援も後押しとなり、本土マネーが香港株を再評価する動きが強まっています。
香港と本土をつなぐ「ウェルスコネクト」においても顕著な変化が見られます。規制緩和の効果もあり、口座数は25,000件から95,000件へと約4倍に急増、これは、富裕層のクロスボーダーでの資産運用意欲を示すもので、従来は限定的だった金融商品へのアクセスが拡大し、香港の金融センターとしての役割が再び高まっています。
ファミリーオフィス誘致政策も効果を奏しています。香港政府はファミリーオフィスへの税金軽減措置やビザ(査証)・居住プログラムなどの取り組みにより、2025年に200件のファミリーオフィス設立目標を前倒しで達成。プライベートバンキング部門の運用資産残高も増加し、約200億米ドルに到達しています。一方で、その間、シンガポールでは富裕層流入が前年の3,500人から1,600人へと大幅減。
中国人富裕層にとって、シンガポールが本土と同じくらい厳しい透明性と管理を強いるのであれば、香港回帰が一過性ではなく、ひとつの潮流として定着しそうです。
両方の金融センターでサービスを手掛ける身として、この流れを肌をもって感じます。
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