優秀な経営者が晩年になって大失敗するようなニュースがあとをたちません。
どれだけ本人が気をつけようとも、環境や成功ファクターの変化に鈍感になりますし、
周りもイエスマンがどんどん増えて軌道修正の機会を逸してしまいがちです。
「成功し続ける怖さ」は、何も大企業のトップや、上場した起業家に限った話ではありません。
弊社が創業して間もない頃のクライアント様で、すでにお亡くなりになったY氏のことをいつも思い出します。
地域のスーパーマーケットチェーンで成功を収めたY氏は、地元の特産品(食品)を取り扱い、高品質な商品と親身なサービスで地元民からも観光客からも、人気を博していました。
傲慢なところがなく、気配りや心遣いをとても大切にされている方でした。
創業して20年で、10店舗ほどまで規模を拡大させましたが、地元スーパーマーケットチェーンの伝統的なビジネスモデルにこだわり続けました。
その間、新興の競合がオンライン食品配送サービスを展開し、また大手スーパーマーケットチェーンと提携し、販路と認知度を拡大させました。規模が大きくなった競合は仕入先へのコストダウンにより、さらに競争力を高めていました。
劣勢に気づいたY氏は、海外展開による収益拡大を目指しました。
しかし、地域型の小売業と海外展開の親和性自体が高くない中で、基礎体力とも言える業務提携やオンライン販売のノウハウ、それに事業投資に必要な余剰資金が不十分でしたので、最終的には、海外主要市場の多くも競合に先行されてしまいました。
そんな中で、リーマンショックにより資金繰りが急速に悪化し、事業規模も2店舗まで縮小。
長年、事業支援させていただいたY氏が最後まで悔しい表情をされていたのを忘れることはないでしょう。
年末にしんみりした話になってしまいましたが、成功体験にとらわれず、常に市場の変化に敏感であることが重要というのは、言うは易し行うは難しです。