重税事業は往々にして高収益事業です。
世間で耳にすることが少ないけれど、
毎年多額の納税をしている事業の経営者なら、
心のなかで頷いていただけるはずです。
しかし、重税と聞いて思い浮かべる負担は人それぞれです。
何パーセントの税率が重税と言えるのでしょうか?
江戸時代では、全収穫量の 50%を領主が取り,残りの50%が農民の手元に残る五公五民が基本でした。
一方で、財務省によりますと、1987年には40%を超えていた法人実効税率が、2016年に始まる一連の法人税改革により、29.74%と「20%台」を実現できる水準となりました。
ここでは便宜上、現在の水準に照らして重税の税率を30%と定義しましょう。
では、重税は高収益とどんな関係があるのでしょうか?
まず税金を計算する基本的な方程式は、課税所得✕税率=税額となります。
上で重税の税率を30%としましたので、課税所得✕30%=税額となります。
課税所得は「益金ー損金」であり、益金を売上、損金を費用と便宜上置き換えると、
(売上ー費用)✕30%=税額となります。
売上が大きいまたは費用が小さい事業は、要するに利幅が大きい事業ですので、
それが自ずと重税事業になることが分かります。
それでは、高収益事業は具体的にどのような特徴があるのでしょうか?
市場や商品、ビジネスモデルを問わず、次の2つの共通点があります。
1.社会とのつながりが太い
意外なことに、高収益産業は華やかではありません。
例えばエネルギー、医療、食料品、自動車、通信、不動産のような産業は、
人々の生活、雇用、そして国の安全に直接・間接に大きく影響を与えます。
こうした産業は、市場規模が大きく、景気に関わらず、底硬い需要が見込まれます。
また、国家の発展を左右するため、随所随所で政策による支援も期待できます。
2.競争が緩やか
意外なことに、高収益産業は競争が激しくありません。
流行りの産業には、多くの参入者が押し寄せ、限られたパイを奪い合います。
職業倫理やスキルセットを伴わないプレイヤーも交じるため
サービスのレベルが落ち、業界全体として次第にマイナス成長となります。
一方で、1で挙げたような産業は、産業レベルでの流行り廃りはありません。
むしろ、設備投資が大きく、多くのノウハウとライセンスと人材が必要とされ、
新規参入が難しいでしょう。
だからこそ、企業は価値を提供できるだけの能力を保ちつつ、
過当競争に陥ることなく、提供する価値に見合った収益を得ることができるのです。
以上から、重税事業は高収益事業であり、その「社会性」や「競争環境」を考えたら、
「税金が高い」という理由だけで参入を見送るのがもったいないことが分かります。
とはいえ、
高収益事業をしたいからといって、むやみに起業しても成功する可能性は低いでしょう。どんなに参入と拡大が難しくても、時代・価値観の変化によって社会が産業に求める役割が変わるタイミングがあります。また、技術革新によって競争ルールが変わるタイミングがあります。それを少しだけ早く予見し、そして少しだけ勇気を出して行動に移した者が、次の高収益産業の勝者になるのです。
また、こちらの記事で書きましたように、事業継承のアプローチを取ると、事業の生存率を上げることができます。
海外法人を使った日本法人買収ー事業継承という起業の選択 その1 - 海外法人サポートセンター
海外法人を使った日本法人買収ー事業継承という起業の選択 その2 - 海外法人サポートセンター
「より大きく稼ぐには、より多く納税する」
体験した者にしか見えない世界かもしれませんが、
これは、ビジネスにおける数少ない真理の一つです。