海外法人をどのように活用すれば日本国内で節税できるのか、という疑問から、インターネット検索したり、海外法人サポート会社に問い合わせされたりする方は多いでしょう。
しかし、その問いに対して答えを得るのは容易ではありません。
第一に、税理士又は税理士法人でない者が、原則として「税理士業務」を行うことが、日本では禁止されているからです。
税理士法第52条にて、「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。」と規定されています。
税理士業務とは、以下の3つを指します。
- 税務代理:税務官公署に対する申告等につき、又はその申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること
- 税務書類の作成:税務官公署に対する申告等に係る申告書等を作成することをいいます。
- 税務相談:税務官公署に対する申告等、法第2条第1項第1号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずることをいいます。
海外法人サポート会社は、日本国内で税理士資格やそれに相当するライセンスを保有しない限り、たとえ日本国内業務について、経験則から一定の見解を有していたとしても、有償無償とわず、回答を示すことはできません。
コンプライアンスがしっかりしている海外法人サポート会社ほど、海外法人の設立手順や海外での課税のみについて回答を示し、日本での課税については税理士など日本国内の専門家への確認を促す姿勢を表明します。
第二に、依頼主の数だけ回答があり、意味ある回答を得るには、依頼主にとっても海外法人サポート会社にとっても時間がかかる必要だからです。
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- 海外FXの収益を入れられる海外銀行はありますか?ATMカードはありますか?
このような危なっかしい質問に対して、すぐに一律に答えるなら、以下のような回答になるでしょう。
- 海外法人も海外口座も、数十万円あれば基本的に作れます。
- しかし、依頼主の状況によっては、作れないことも多々あります。
- 税務リスクもあります。
しかし、それではなにも解決せず、依頼主の求めるものではないでしょう。
依頼主の問題解決に本当に役立つ提案をするためには、依頼主の業種、職種、資産、収入、居住地、家族構成、保有する法人、保有する口座、信用記録、語学力、利用目的、スケジュール、期待値、予算、将来の計画などの情報が必要です。
詳しければ詳しいほど効果的です。依頼主の個別状況にフィットした提案になる可能性が上がります。問い合わせの段階で、なるべくこれら要素を説明したほうが、有益な回答に繋がります。
しかし、こうした情報がすべて共有されるまでには、機密保持契約の締結が必要で、誤解を防ぎつつ、信頼関係を築く上で、メールに加えて打ち合わせが必要な場合もあるでしょう。
いずれにしても、双方が時間を投入しなければ、意味のある回答が生まれることはありません。
第三に、ブレインピッキング(ノウハウを無料で盗まれること)を防止するためです。
オフショアサービスが持続的に存在している自体が、海外法人を活用した節税が有効であることをすでに証明しています。
具体的な節税方法を納得できるまで説明してもらわないと発注しない、怪しい相手や使い道のないものにお金を払いたくない、という心境は十分に理解できます。
しかし、現実問題として「自分は無料で時間とノウハウを提供されるに値する相手であること」、そして「詳しく説明を受ければ理解できるだけの素地があること」を海外法人サポート会社に示さなければ、欲しい情報を得ることはできません。
オフショアサービスは、資産や事業を保有し、信用もあるクライアントが一層富めるために提供されます。インターネット経由でお問い合わせされた方の「発注の可能性」そのものが交渉の武器になることは稀です。
自分には事業や資産、あるいはそれに相当する高いポテンシャルや人脈があり、業者に専門知識を補ってもらえれば、みんなにメリットが出る、というスタンスでコミュニケーションされるのが建設的でしょう。
これは、登記代理店、口座開設代理店、会計事務所、弁護士事務所、プライベートバンカー、証券会社、投資アドバイザリー会社など、すべてのオフショアサービスプロバイダーに共通して言えます。
今回は、海外法人を活用した日本国内の節税方法について、海外法人サポート会社に雑に問い合わせるだけでは、税理士法の制約、時間投入の制約、ブレインピッキング防止の制約から、具体的なアドバイスを無料では得られないことを説明してきました。
とはいえ、問い合わせないことには何も始まらないため、
次回は、少しでも有益な回答を得るためのヒントを書きます。
ご相談はメールより承っております。