毎年数件オフショア銀行を開設したいという問い合わせを受けます。
単純に儲かりそうとか、他の事業との相乗効果を狙いたいみたいな経済的な動機もあれば、世界平和のためとか独立国を作りたいみたいな、弊社の能力の範囲を大きく超えるものまであります。
オフショア銀行を開設するには、多くの要素が関与します。法域や時期によって、従うべき法律や規制も異なる場合があります。
これから数回に渡って、専門家として、多くの場合で共通する基本的な手順を示していきます。
第1回は、そもそもオフショア銀行とは何か?その業務内容を理解するところから始めたいと思います。
オフショア銀行とは、顧客の本国外で設立された銀行のことを指します。つまり、銀行の本拠地が、顧客の本国とは異なる国や地域に位置している銀行です。それ以上でもそれ以下でもありません。
そのため、オフショア銀行の業務内容自体は、一般的な銀行業務と大差がありません。主に以下の領域に分かれます。
預金
ー個人や法人に様々な口座を開設して、預金を受け入れる。
ー利子の支払いや預金残高を管理する
放款
ー個人向けの住宅ローンや自動車ローン、法人向けの資金調達を提供する。
ー融資の審査や金利の設定、返済スケジュールの管理を行う
為替
ー異なる通貨の売買、外国為替レート、外貨送金を提供する
ーSWIFTに加盟し、主要通貨においてコルレス銀行契約を締結する
投資
ー証券取引や投資商品、ポートフォリオ管理を提供する
ー投資銀行やファンドとの提携を行う
オンラインバンキング
ーインターネット経由で口座残高の確認、取引の実行、送金の管理
オフショア銀行の特殊性はその目的です。通常、顧客が金融センターや税制の恩恵を受けるために設立されます。具体的にはこの4つです。
- 本国よりも低い税率や特典を享受できる
- 資産を法的なリスクや政治的な不安定性から保護できる
- 顧客情報(プライバシー)の秘密保持を法的に保証される
- 異なる通貨での国際取引の便益を利用できる
オフショア銀行を設立してビジネスとして営むのであれば、銀行業務を通して、この4つのメリットを顧客に提供しなければなりません。
しかし、そうすることで、資金洗浄や租税回避などの不正行為にも巻き込まれる危険性があるため、国際的な基準や規制に従い、透明性と適法性を確保することが求められます。
オフショア銀行が設立される主な法域は以下のとおりです。
- ケイマン諸島
- スイス
- バミューダ諸島
- シンガポール
- バハマ
- マルタ
- ジブラルタル
- イギリス領ヴァージン諸島(BVI)
- ルクセンブルク
いずれも、信託法や法人法が整備されている、プライバシー保護と金融秘密に関する厳格な法律が存在する、政治・経済状況が安定している、金融サービスの多様性や政府の支援がある、税制上の利点がある、といった特徴を備えています。
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