前回の続き⇒
主要オフショア法域におけるオフショア銀行設立では、厳格な資本計画審査と自己資本規制要件を充足する必要があります。
1.資本計画審査
資本計画の審査には、銀行が実行可能かつ持続可能なビジネスモデルを有しているか、および潜在的なリスクに対し適切な資源を持っているかを確認するプロセスがあります。
新規に設立する銀行には、最低でも数十万ドルから数百万ドルの初期資本が必要とされます。法域、業務の範囲やリスクプロファイル、規制当局の要件に応じて、追加の資本が要求されることがあります。
その上で、資本計画には、運用が開始された後の業務の成長に応じて、資本をどのように維持し増強するかについてのストーリーが必要です。その際、利益再投資計画を含めることで、追加資本を圧縮できる可能性があります。
リスクファクターをきちんと把握しているのか、包括的なストレステスト(悪条件下でも業務を継続できるよう、架空のストレスシナリオを使用して資本が十分かを検証するテスト)がなされているかが評価ポイントです。
2.自己資本規制要件
自己資本規制要件は、銀行が保持すべき最低レベルの資本を規定し、準備金や緩衝資本など、様々なリスクに対する保護を意図しています。
主要な国際規格であるバーゼル協定(バーゼルIII)は、自己資本規制の基盤を形成していますが、個々の法域がこれをどのように採用するかには差があります。
すべての銀行は、最低資本要件として、総リスクウェイト資産額に対する一定の割合以上の資本を保持しなければなりません。バーゼルIIIでは、最低限のTier 1およびTier 2資本比率が定められています。
- Common Equity Tier 1(CET1):最低要件は4.5%です。これは銀行のリスクウェイト資産(RWA)に対する純粋な株主資本の比率です。
- Additional Tier 1(AT1): CET1を上回る分のTier 1資本です。Tier 1資本の合計要件は6%であるため、CET1要件に、AT1を1.5%追加することが求められます。
- Tier 2: 全体の資本の比率が資産のリスクウェイトに対して8%以上である必要があるため、Tier 1資本に加えて、2%のTier 2資本が必要です。
各法域の中央銀行や金融監督機関によって要件は異なりますが、予期しない損失に備える余剰資本としての資本緩衝、資産総額に対する資本の比率に基づくレバレッジ制限、短期的な資金需要に対処するための流動性規制、規制当局の監査対応体制なども、評価ポイントです。
3.資金調達
オフショア銀行設立のための資金調達は、オンショアと似ており、様々なソースから資金を得ることができます。
個人の貯蓄、ベンチャーキャピタル、市場からの借入れ、融資保証などに加えて、株式発行、オフショアファンド、プライベートプレイスメントといったアプローチも見られます。
必要とされる初期資本、手元にある自己資本、資本規制や課税問題の制約、この3点が明らかになれば、資金調達方法の選択肢はおのずと絞られます。
ご相談はメールより承っております。
kaigaihoujin.yamaguchi@gmail.com
関連記事: